秋の夜長に勝手に石見神楽を解説しようじゃないか。

島根西部の伝統芸能・石見神楽を妄想と主観で解説してます。ビギナー向け。

【御座】だが、この動画を見てもらった方が早い。

ハロー、どうも、生きてますよ。

なーんもしてないゆるゆるブログなのに、最近は日平均15アクセスくらいありまして、嬉しいかぎりです。「KAGURA姫」ブームも落ち着いてきたし、神楽のシーズンも終わっちゃいましたが、アクセス数を見るとまだまだ神楽に興味を持って頂けていることを実感します。本ブログにお越し下さり、まことにありがとうございます。

 

さて、わたくしはと言いますと、他のヲタ活にいそしんでおりました。アニメにKぽに年の瀬は忙しいんですよね!!時間がないよ!!てゆうか、金がなくて銀盤の円盤が買えない(悲痛) 。なので、年末にネタ記事出して、年明けにめでたい系の解説を1個書いたらそれでいいやーと思っておりました。

 

 

が!!!!!!!!!

 

 

超面白い動画を発見したので急きょ書くことにした。これ。↓

www.youtube.com

リンクはYouTubeなんですけど、やー、発見したとき笑ったね。江津青年会議所さんのチョイスがなんかもう、渋くて!!笑った!!いや、そうなんだけど!!江津と言えば大元神楽なんだけども!!『御座』て!!!!!

郷土愛あふれすぎてて笑いました。アニメ化できそうだね笑。

 

この『御座』という演目は、大元神楽系の演目を持っている神楽団ならばどこでもある超メジャー級なものでして、実はそんな珍しいものではありません。(大元神楽のさらっとした説明についてはコチラ。→【小ネタ】)

だがね!!舞っておられる市山神友会さん=市山大元神楽っていうのが、スゲー!スゲー!スゲー!とこでしてね!!神憑り」=「託宣」が実際に起こる神楽として有名なんですよ!!(←興奮気味)

「KAGURA姫」の前日に再放送された「新・日本風土記」の神楽がテーマの回でもNHKのカメラクルーが来てたし、遠方から偉い学者先生が来られたリ、その先生が大元神楽の本をお書きになられたりと、その分野では超超超有名な民俗信仰なんですよ!!

 

だからね、みんな見た方がいいよ!!!!!!!

 

 

…といっても、さっぱりプーでしょう。基本的に、玄人の中の玄人しか知らない神楽なんですよ、大元神楽って。私はここら辺に住んでたことがあるので、運よく知ってるってだけです。大元神楽に関しては、まだまだまだまだ勉強不足です。

 

 

でもまぁ、せっかくなので、今できる範囲で解説を。

 

大元神楽は石見中部の山間部、といっても中国山脈までは行かず、ちょうど山と海の真ん中くらいの地方で受け継がれてきました。

特に、市山神友会の本拠地・江津市桜江町は神楽の見本市みたいなところで、江尾大元神楽は国指定無形文化財なはずだし、谷住郷の八調子は海沿いエリアっぽい派手な感じで、市山大元神楽はさっきも言った通り「神憑り」があって、なんか濃い濃いいよキャラ立ちしすぎよ。

この中でも市山大元神楽は、「新・日本風土記」でも「神憑り」が貴重映像資料として放送されていたように、全国の神楽の中でもとりわけ特別な存在

芸能として花開いた「KAGURA姫」の芸北神楽や、神事の一環として奉納される出雲神楽はもちろんのこと、同じ地方で受け継がれてきた石見神楽とも一線を画しており、まさに、独特かつ異様。そして何よりも、魅力的。

そんなあやしげ―な、オカルティーな信仰が、人柄のとても良い、あたたかく優しい土地柄で育まれてきたなんて、もうカオスとしか言いようがない

不思議なところだ、桜江町。*1

 

ここらへんのことはいつか記事にしてまとめるつもりなので、目下勉強中です。それでは、勉強中の身ではありますが、一応、演目の解説もしてみますね。 

 

…って、この動画すでに解説がついてるよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!

 

なんということだ!!スバラシス!!アジュナイス!!

いやー、前回の記事で講釈垂れまくってとても申し訳なかったなぁ、とちょっと落ち込んでまして、なので、まさかこういう解説動画が上がっているだなんて…。クッ…、本当に本当にありがたいよぉぉおぉ…。勉強に!!なります!!!…ヲタクなので!!

 

 

ということでね!!

上の動画見ればいいから!!それで解決するから!!!フゥッフッー!!

 

以上!!『御座』でした!!! ~ 完!!

 

 

 

 

 

ってしようかな、と思ったけど動画の解説がちとカタい丁寧なので、ちょっとだけ私なりの解説もしますね。

 

まずは、桜江町の大元神楽の一番の特徴である「口上」。口上=セリフなわけですが、他の地域や八調子の神楽とは言い方が若干違います。

例えば、分かりましたよ、って意味の「かしこまって そうろう」。

八調子のとこは「かしこまってぇえ~、そぉ~お、ろ~ぉう」みたいに抑揚をつけた言い方をしますが、大元神楽は「かしこまってそぉろ」って言う。早い。タメがない。高校生の「ちーす」「ちわす」くらいタメが一切ない。

これはねー、八調子見慣れてる人は戸惑うっていうか笑っちゃいそうになるよえ!?セリフ早くね??ってなる。

『天神』の討入りの前の重たいシーン、「わたしも…、お供させて頂きます!」「…、分かった。」みたいな良い場面あるじゃないですか。でも大元神楽だと「俺も行くッスよ」「ッス」って感じになってしまう。サクッとかる~くなってしまう。

なんでこんなにかっぱえびせんなんですか!?と問えば、「そんなに気取った言い方はせんけぇなー、そういうもんだけー」と言われました。…ウッス!!

これがなー、最初はワロエるんですけど、段々クセになってきますからね。それでいい!その調子だ!って気分になってきます。不思議なところだ、桜江町。

 

じゃあ、やっとこさ演目に入ります。

 

御座というのは、そのまま茣蓙のことで、神様の座る場所=「御座」に青いイグサで新しく拵えた「茣蓙」を敷きます。ダブルミーニングなのかな。まさか、ダジャレなの…か…?

 

最初の方の口上は何言ってるか謎ですよね。呪文か…?ってなる。現代語に訳されても謎が止まりません。これは仕方なくてですね、ある程度、古事記などの知識がないとちんぷんかんぷんだと思います。

大元神楽は自然を信仰しているので、実は陰陽五行説にきちんと即した舞を舞っています。陰陽五行説と言うのは、稀代の陰陽師安倍晴明のシンボルである五芒星をイメージしてもらったらいいかな。東西南北に中央を加えた五方と、木火土金水の五行のバランスを上手く取ることで世の中が安定するという考え方ですね。

なので、最初の呪文は、五方の神が司る五行を説いています

しかし、この思想は中国からもたらされたものです。中国では超有名な四神がそれぞれ、北方・玄武は水、南方・朱雀は火、東方・青龍は木、西方・白虎は金を、そしてこれに中央・黄竜が土を司っているんですけども、残念ながら、日本には五方を司る神様はいないのです*2

でも日本はホラ、八百万の神々がましますからね、なんかちょうどよさげな神様を見つけて当てはめたわけですな。火の神様は…火之迦具土命!だから南担当ね!的な。

なので、五行の特性に当てはまる日本の神様を五方の神に置きなおして、更に四方四方のたくさんの神々をお呼びしているシーンなんですねー。

 

お次は、鈴をシャランラしてますねー。動画はさらっと「鈴は~」って説明されてますけど、ジングルベルしてなくね!?ってなりませんか。『天岩戸』でウズメは金ピカの豪華な鈴をリリーンリーンしてたよね!?って。

その通りで、この鈴を厳密に区別すると「輪鈴(わすず)というものになります。輪の中に輪を通してあって、その輪が互いに擦れてシャンシャン鳴る、って表現が難しいわ。みなさん家のカギに車のカギとかアクリルストラップとかラバーストラップとかひっつけてますよね。アレ振るとジャカジャカ鳴りますよね。それと同じです。←横暴

 

んで、ぐるぐる同じことを繰り返すのですが、大元神楽は神様のための神楽なので一つの動作を何回やるのかいうことが厳密に定められています。基本は4回リピートです。

 

そして!最後の最大の見せ場、ジャンピング・ジャンピングタイム!!(←今つけた)

 

ネタバレになっちゃいますけども、聞くところによると失敗しないように飛べって言われてるらしいですね。実は。これは別に脅されてるのではなく、失敗する前にちゃんと終わりなさい、ということだそうです。

いかに長くジャンピングし続けるかで興奮度合が違ってくると動画でも解説されてましたよね。だけど、舞手からすれば、失敗しないようにどこでやめるかという見極めが非常に大事らしいのです。なんだか観客と舞手のギャップが面白いなー*3

 

 

こんな感じで『御座』、いかがでしたでしょうか?

 

今回は相当マニアックな演目をマニアックに語ってきましたが、実は私、市山大元神楽の例大祭をちゃんと生で見たことないんですよ…。お恥ずかしながら…。2回も見に行ったし、目の前で「神憑り」もあったらしんですが、その頃は寝るのが仕事だったので…。

なので!!ちゃんと!!みたい!!

次は辰年戌年。ということは来年は酉年だから、一年我慢すれば見れる!!楽しみすぎる!!ヒャッホゥーー!! 

 

みなさんもぜひぜひ、カオス不思議なまち・桜江町へ!!

かわいいピンクの橋が「よう、きんさった。」ってお出迎えしてくれますよ。

 

 

 

*1:桜江町はほんともう、すっごい人の良いご老人方がたくさんいる良い所なんだけど、「えんこう伝説」と呼ばれる河童伝説があったり、みなさんご存じのサイコサスペンス昔話「舌切り雀」の発祥の地があったり伝説・伝承に事欠かないオカルティーなとこです。私の祖母は若い時に裏山でツチノコを見たらしい。ツチノコはコロコロ転がって移動するらしい。本当かな。

*2:ここらへんの、陰陽五行説にまつわる宇宙の理を『五神』という演目で実に見事に説いています。登場人物は五行に関するように名づけられていて、末っ子の埴安親王の名が『御座』でも登場していますね。(埴安比売命と埴安毘古命はどちらも土の神様。)埴安親王は五郎の王子とも呼ばれますが、市山大元神楽では黄竜王という名前になっており、他の兄弟も青竜王、赤竜王、白竜王、黒竜王といい、演目名も『五竜王』といいます。独特ですよね。ちなみに、『五神』はセリフで舞を進める「口上舞」なのでセリフが分からないとスゲーつまらないんだなー、これが!!だから!!ちゃんと解説したい、と本気で思ってる!!

*3:ちなみに今回の記事を書くにあたり私の父上(一応、経験者)にインタビューを敢行したところ、ジャンピング・ジャンピングタイムを「わしは50回飛んだんだけぇ!!」と言ってきました。本当かな。