秋の夜長に勝手に石見神楽を解説しようじゃないか。

島根西部の伝統芸能・石見神楽を妄想と主観で解説してます。ビギナー向け。

【天岩戸雑学】ジレとチョッキとベストの違いとは

やっぱ、ネタがあればはかどりますね。ちゃんと神楽見に行くべきだなー。書きたいことは山ほどあるんですが、低いテンションじゃ真面目でつまらん文章になってしまうので、この調子でさっくり行きたいところです。

ただし、ハイテンションに慣れてきたのか、文章が長くなってやばいです。さっくりやりましょう。さっくりと。

 

前回の記事で『天岩戸』の面白さをお伝えしたつもりですが…、ただただ神様たちをイジりまくって終わった感が否めません…。アレ…?面白さ…とは…?私の中のスサノオが爆発したということにしておこう…。

 

では、気を取り直して雑学スタートです。

 

鬼舞と違ったユニークな面白さが魅力の『天岩戸』。この演目の一番の見どころといったら、やはり登場人物の多様さに他ありません。

神楽は単純なので、鬼と神の対立構造をベースとしてます。良いヤツと悪いヤツ。なので、大抵、偉そうな人と悪そうな人しか出てきません。

しかし、『天岩戸』に関しては、女神・巫女・翁・神・男と非常にバラエティ豊かなメンツでお送りしています。それだけ日本の神々はキャラが強いってことなんですが、こと神楽においては、色んな衣装や面、舞や所作を一度に見られる贅沢な演目です。実は地味演目じゃないんだよ*1

 

まずは、天照大神から。

天照大神は女神なので、神楽だと「姫」に当たります。若い女の人はみんな姫。「姫面」に白の狩衣、紅の袴をお召しになっており、この衣装はどこの神楽団もほぼ同じ。

ただ、手持ち道具がまちまちで、冒頭は「幣」・「鏡」、クライマックスはフラフープにヒラヒラがいっぱいついてる「茅の輪」を持って出てくる場合が多いですかねー。

このヒラヒラは実は炎を表しているので、丸くて燃える=太陽を連想してこのシーンで使ってるのかな。「茅の輪」といえば『鍾馗』の須佐之男命が持つ武器で、目に見えない病魔を映し出すスコープにして、病を焼き払う縁起物。「茅の輪くぐり」とかしたことないですかね、病魔退散・病気平癒にご利益がありますよ。

姉弟でオソロだね!!っていうと怒られちゃいそうなので、「茅の輪」ver.の荘厳な感じも良いけど、私はカワイイ「鏡」ver.を推したいな。アマテラスといえばやっぱ鏡だしね。

また、姫といっても高天原最高神ですので、厳かな所作が求められます。が、初心者とか女の子でもガンガン入れるらしいですね。入ったり出たりするだけだし、何より舞わなくていいしね。アゴ休憩(=冠を固定させるためにアゴに紐が食い込む拷問のハーフタイム、の意。詳細は【解説】参照。)もあるし、おススメです。←?

 

この流れで、次は宇津女命

面は「姫面」、衣装は天照大神と同じような狩衣に袴or女物の着物の上に白い狩衣が多いですかね。全身オレンジとかもあって、ほんと、センスの見せ所です。いいですか、センスの見せ所ですよ

宇津女命は女神ですが、神を呼び寄せる巫女の特色が強いので右手に「鈴」を、左手に「三叉矛」(さんさほこ)を持ちます。

矛といっても武器ではなく祭礼用の道具の一つで、正式名称は「祭矛」と呼ぶらしい。なんで戦わないのに武器持ってんのかなーって気になってたんだよね!男性社会の荒波と戦ってんのかなーとか、自分に負けない!とか…。色々戦ってるものありそうだからかな…。

頭には金の冠かショート烏帽子を被って、「鈴」をシャランラしながら踊ります。宇津女命はゴ休憩がないのでホント大変そう…。アゴ…痛いよね…。赤くなるよね…。

ウズメについて書きたいこといっぱいあったはずなんだけど、なんかアゴのことしか考えられないので次に行きます。

 

そんでもって、天児屋根命と布刀玉命

コヤネはおヒゲがフサフサな「翁面」を必ずつけますが、衣装はジジイ感溢れるグレーっぽい地味めなもの、「まだまだ現役じゃい」ときんきらしたもの、色々です。老爺役なので小柄な人、および中腰がしんどいので若い人が中に入ることが多いそう。私は小さくてモフモフしててかわいいから統一感のある地味ジジ派だな。

フトダマはまあまあなおヒゲの「翁面」か、あっさり塩顔の「神面」の2パターンですかね。「翁面」だとWジジイがどうしよーってなってかわいいけど、「神面」で若返った途端に舎弟感増すよね完全にコキ使われてんな、コリャ。衣装はコヤネ同様、色々です。

お二人とも、ロング烏帽子に「幣」と「鈴」を持ってます。先っちょにティッシュをふんだんにあしらった棒が「幣」。本当は、竹の棒に半紙か和紙が付けてあります。神社で祈祷してもらう時とか絶対見たことあるはず。神社には必ずある祭具の一つで、厄や禍を祓い清めます。ちなみに神楽で「幣」を持つことが出来るのは神様と天皇さまの偉い人だけ

 

やっと最後に、天手力男命だー。たーぢーかーろーおー!!

タヂカロオの面は一応、フトダマと同じ「神面」に分類されますが、濃厚ソース顔だし何よりコワモテだし同じでいいのかって思うよね。「神面」は翁・天狗以外の男の神様ならほぼ必ずつけるので、カテゴリーが広すぎるんですよ。なので、「神面」の中でも特に男らしさが強調されるものは「男面」と言ったりします。この「男面」も男性ホルモンがドバッてなっちゃってるのと、そうでないのと細かく分類があるので、それはまたいつか。つまるところ、タヂカロオは「男面」ってことですな。

衣装は色々あるけど、どうなのかなー。男らしい=武人的なイメージからか「陣羽織」という肩がサイヤ人みたいなチョッキ?今風に言うとジレ??着てることが多いかな。(サイヤ人みたいなジレって、、、化学反応起きた……!!)

短刀持って天岩戸をこじ開けようとしますよねー、だが私はこの演出反対派です。タヂカロオは手の神様なので、素手でいかんかい!!ってなる。なので短刀は道具にいれてあーげない。

 

そんで、引きこもりから無事脱却したアマテラスが幕内にハケると、最後の最後に全員面を外し、扇に持ちかえて、突如踊り狂います

え?どゆこと…?テンション高すぎない…?って若干引くかもしれませんが、お話的にはアマテラスが出てきたところで終了していて、このダンシングタイムは「舞手が八百万の神々に感謝する喜びの舞」=カーテンコールとなっています。なので、神様役を演じるための面を取って、一舞手として踊るわけですね。まさにミュージカル。

 

 

 

こんなもんかな。

自分で書いててあれだけど、ホントに見どころいっぱいある。面白いね、『天岩戸』。

この神楽は奉納舞色が強めなのでハッキリ言って途中ダレちゃうんですが、こういうところに注目してみると、また違った面白さがあるんじゃないかな。

あと、今回は初めて調べものしながら書いたのでめっちゃ勉強になりましたー。衣装とか神楽面とかちゃんと知らないこといっぱいあって面白かったです。情報がとっちらかってたので、まとめて記事にできたらいいなと思います。

 

 

 

 

でも、しばらくはいいや。

 

*1:数多くの神楽の教科書をお書きになった矢富先生によると、「この舞は児屋根命が翁舞、太玉命は神舞、大神と宇津女命が女舞、手力男命は荒舞というように、それぞれの舞方が組み合わされているのが特徴。宇津女命は女舞といっても、足を床に叩きつけるように舞い、厳粛に舞う大神とは対照的に舞う必要がある」とのこと。着眼点間違ってなくてホッとしました~、良かった~。(矢富巌夫『石見神楽』より。)