【大蛇超訳】やまたのおろち
注:妄想と主観をフル装備して書いていきます。イメージ崩壊したくない人、真面目なあらすじを求めている人はお読みになりませんよう強くお願い申し上げます。
しとしとと生ぬるい雨の降る中、一人の青年が旅をしていました。
ぼろぼろの蓑笠をまとい、供一人つけず歩くこの青年は、名をスサノオと言います。
この青年は、天上の神々が住まう高天原を統べる太陽の神・アマテラスを姉に、夜を照らす月の神・ツクヨミを兄にもった位の高い神様でした。しかしながら、姉の家の玄関先でう〇こしたり、馬の皮を引っぺがして女官にトラウマを植え付けたりと、やりたい放題やらかす伝説のDQNとして高天原では悪いうわさが絶えません。
そしてついに、数々の悪行に耐えかねたアマテラスは「もう、ムリ!!」とブチ切れ、引きこもりになってしまいます。太陽が隠れてしまったら、世は乱れ、草木は育ちません。神々が「ねぇ、ドアを開けて~」と心配しても完全にシカト状態。結局、これをみかねたアマノウズメの捨て身の作戦で事なきを得ましたが(←ここらへんのお話は「天岩戸」という演目で描かれています。)、スサノオにはアマテラスをヒステリーかつ引きこもりにさせた罪により高天原からの追放という重い処罰が下されました。
行く当てのないスサノオはかねてより思いを馳せていた黄泉の国(現在の島根県奥出雲町)にいる母・イザナミに会いに行こうと、たったひとりきり、一路西へ向かいます。
そうして長い旅の果て、ようやく出雲の地へとたどり着いた、ある日のことです。
川の上流からどんぶらこ~、どんぶらこ~、と箸が一本流れてきました。
残りの弁当はどうやって食べるつもりなのか気になったスサノオは、その片方だけの箸を拾ってみると、思いのほかセレブレティなお箸です。
「ハッ…!もしやこれは、この上流の住民からのSOSなのでは……?」
名探偵スサノオはじっちゃんの名にかけて川の上流へ行ってみることにしました。
やっとのことで川上に着くと、そこには年老いた夫婦と一人の美しい娘が泣いているではありませんか。しかしどうにも、この場の空気は重たすぎて「ちわーす」みたいな軽いノリでは話しかけられません。意を決して挙動不審に近づくと、持っていた箸に気づいたおじいさんはこう言いました。
「そ、それは!!わたくしどもが流したメーデーです!!」
ベタベタな展開にスサノオが戸惑っていると、おじいさんは聞いてもないのに勝手に一人で語りはじめました。その話によると、
「この辺りには頭が8つ、胴が1つ、尾が8つの巨大な蛇のUMA・ヤマタノオロチが住んでおり、毎年この時期に散々暴れまくったあげく、姫を一人食べていく。最初は8人いた姫たちも、今年で最後の一人になってしまい悲しくて悲しくて震えている。」
とまさかの怪奇現象を語るではありませんか。
うわーやべーことに巻き込まれちまったなーと思いつつ、しかしながら、さっき見た姫の泣き顔がふと浮かんできます。…いや、待てよ。よくよく思い出すと泣き顔もすげーかわいかったし、…オレしか頼る人もいないっていうし……。ん、これは!?ちょ、フラグ立ったよね!!?とテンションが上がったスサノオは
「じゃ、じゃぁ~?もしそのオロチ?に勝ったら~、そいつと結婚するから~、、、、って、バ、バーロー!!じょ、じょうだんだし!言ってみただけだし!!」
と自分の痛い発言に悶えていると、「いいよ。」となんともあっさりとじいさんから公認されたので、半信半疑ながらも大蛇を退治したら姫と結婚するという条件でこの難題を引き受けることにしました。
しかし、頼まれたはいいもののバカでっかいUMAをたった一人で倒すのはムリです。そこで、高天原で培った悪知恵を使って策を練ることにしたスサノオは熟考の末、あるひとつの名案をひらめきます。その名案とは、
「アル中なオロチの特性を利用して、じいさんとばあさんの老体にむち打って作らせた大量の毒酒を飲ませ、急性アルコール中毒で動けなくなったところを一気に殺る」
というなりふりかまわない計画でした。
そして、ついにその日がやってきました。
ヘルニアに悩まされながら作った酒の匂いにつられて、深い山の奥から続々と大蛇が這い出てきます。大蛇たちは毒入りとはつゆ知らず、ヒザの痛みに悩まされながら作った酒を上機嫌にあおってゆきます。そしてとうとう最後の一匹が瞼を閉じると、舞台袖でドキドキしながら待っていたスサノオが姿を現しました。
用心深く大蛇たちを小突き回して眠りについているか確認すると、一匹の大蛇の頭を掴み、一気に首を刎ねようと刀を振り上げます!
その瞬間!!血のように赤い写輪…瞳がカッと見開かれたではありませんか!
笑えない寝起きドッキリを仕掛けられた大蛇たちは阿鼻叫喚。あんのジジイとババア、水で嵩増ししやがった!!とスサノオもおじいさんとおばあさんに仕掛けられた逆ドッキリという婿入りの試練で心臓が猛ダッシュしています。
しかし、ここまで来て後には引けません。
うねる大蛇の巨体を躱しながら一匹、また一匹と大蛇の首を獲っていきます。
そしてついに、満身創痍の体に力を込め、「ラスいち!!」とばかりに最後の大蛇の首を鮮やかに刎ねました。血の滴り落ちるその頭を天高く掲げると、じわり、じわり、これまで感じたことのない喜びと安堵が広がってゆきます。
これで、やっと、姫と結婚できる、姫が、「おつかれさまでした」ってタオルを渡してくれる、そう冷たくて生臭いタオルを渡して・・・
(・・・・・・・・・・なまがわきかな???)
嫌な予感がしたスサノオはかなりうっすら目を開けてみると、なんと、胴体だけになった大蛇がビチビチ暴れまくる衝撃的な光景が広がっているではありませんか。
ギャーーー!!G並み!!とブンブン振り回した剣がちょうど大蛇の尻尾あたりを切り落とすと、大蛇の胴体は血を撒き散らしながら、しばらくのた打ち回ったあと、次第に動かなくなってゆきました。
ほ、ほんとうに死んだのか…?とジェット後のGを見るような目つきで大蛇を検分していると、尻尾の先に何かキラリと光るものがあります。
Gをポイする時と同じ感覚でうわぁきもぉ…と気持ち悪がりながらも、その光る何かを一息に引き抜くと、それは大蛇の血に濡れながらも輝く一振りの剣でした。
薄曇りの空を反射する美しい刃を右手に、死闘の果てに獲った大蛇の首を左手に、スサノオはあの家族の喜ぶ顔を胸に浮かべながら、やっと大きく息を吐きました。
こののち、スサノオはこの剣を「天叢雲刀」と名付け、櫛稲田姫とともにこの地に新しい居を構えることを、厚く重なる雲の下、高らかに誓ったのでした。
めでたし。